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2021年8月12日(木)13日(金)応援しあう東北アカデミー「自分と東北のつなげ方が分かる、見つかる2days」イベントレポート

更新日:2021年12月2日



東日本大震災から10年が経過した節目の年に「応援しあう東北 TOMODACHI ファミリーマート SDGs リーダーシッププログラム in 東北~東北から全国へ、そして世界へ~」を始動。東北の若者が社会課題の解決に向けたソーシャルアクションに取り組み、世代を越えて支えあうコミュニティの構築、地域に根差す活動を実践するための支援を行います。


プログラムの一貫として行われた「応援しあう東北アカデミー “自分と東北のつなげ方が分かる、見つかる2days”」では、東北で活躍するゲストを迎えてのパネルディスカッション、参加者同士で語り合うグループセッションを開催。80名を超える若者がオンライン上に集結したイベント当日の様子をお届けします。


東日本大震災から10年、次の復興ステージに入った東北の新たな取り組み

東北で何かを始めたいという想いやアイデアを持つ全国の若者と、すでに東北で活躍している経営者や活動家とがつながり、支援しあうコミュニティ「応援しあう東北」。このプログラムを通して「持続可能な東北」を実現し、東北が復興した姿を世界へ発信することを目指していきます。


10年前、応援してもらった東北だからこそ、これからはじめる誰かを応援できる。東北から全国、そして世界を持続可能にしていくアクションを起こしていく。あの日から丸10年。2030年に向けた第一歩を、ここ東北からはじめます。


応援しあう東北アカデミー “自分と東北のつなげ方が分かる、見つかる2days”



2日間にわたって行われた「応援しあう東北アカデミー “自分と東北のつなげ方が分かる、見つかる2days”」。DAY1では東北で活躍しているゲスト3名によるパネルディスカッション「自分と東北が重なったとき」を通して、なぜ東北で今の活動をしているのか、活動を行う中で大変だったこと、などを伺いました。


DAY2ではプログラムに関わるメンターやコーディネーターの紹介、チームに分かれてのグループセッションを行い、参加者同士の交流を深める時間となりました。


イベント参加者からは「分野が違っても根底でつながる部分があり、東北をより良い場所にしたいという目標はみんな同じなのだと感じることができ、パワーをいただきました」「編集の経験を活かし、地域を盛り上げて外とつなぎたいと考えております」など、次のアクションへとつなげていこうとする前向きな声が上がり、盛り上がりを見せた2日間。それではイベント当日の様子を振り返っていきます。


和やかなムードで幕を開けたプログラム初日。東北にゆかりのある方や東北を拠点に活動している方など、東北をキーワードに日本各地からオンライン上に参加者が集まりました。プログラムの概要説明を行った後、パネルディスカッションへと進んでいきます。



登壇ゲストはこちらの3名。

・株式会社アウトクロップ代表取締役/栗原エミルさん

・株式会社北三陸ファクトリー 取締役/眞下美紀子さん

・ブルーファーム株式会社 代表取締役/早坂正年さん


ゲストに加えてファシリテーターに渡辺さやかさんをお迎えし、トークを進行していただきます。渡辺さんは気仙椿の油を使って化粧品の製造・販売やアジア女性の社会企業家を支援する活動を行う起業家の1人。ゲストと同じく東北で活躍している渡辺さんにゲストの話を深掘りしてもらいます。


テーマは「自分と東北が重なったとき」。なぜ東北に関わることになったのか、活動を行う中でどんなことが大変だったのか、ここでしか聞けない話を伺っていきましょう。



地元を離れて気付く、足元にある地域の価値

岩手県洋野(ヒロノ)町出身の眞下(マッカ)さんは、大学進学のために県外に移り住むことになりますが、当時は地元のことが好きではなかったそう。ですが、東日本大震災をきっかけに地元に戻ることを意識し始めます。震災当時は仕事を優先してしまい、自分は何もできなかったと辛い想いを抱えていた眞下さん。震災から4〜5年経ったタイミングで地元の力になりたいと思い、行動に移します。


眞下:当時は地方創生が注目されていたこともあり、自分の目指す今後のビジョンと合致し地元に目を向け始めました。地元のために何かしたいと思い、ふと手にした雑誌に「日本を突破する100人」というテーマで今の会社の社長が紹介されていて。同じ地元の方だと知ったのをきっかけに「洋野町のために力を注ぎたいのですが私に何ができますか?」と問い合わせメールを送りました。


後日社長から「眠ってしまっている地元の魅力を伝えていき、生産者へ還元する仕組みを作りたいから、ブランディングを一緒に考えてほしい」と返事をもらいます。展示会のお手伝いに関わり地元の商品を販売したときに「こんなに価値のある仕事はないと思った」と眞下さんは語ります。


眞下:自分ができることとやりたいこと・求められることが合致し、地域に根差した仕事をしたいと思いました。そこから東北オープンアカデミーのフィールドワークで、地元のプログラムに参加したんです。ウニをその場で剥いて食べる作業は私にとって見慣れた光景でしたが、他の参加者が「こんなに美味しいウニを食べたことがない」と感動してくれたときに、足元にあるものが地域の価値だと気付きました。


住んでいたときには気付かなかった地元の価値を身を持って体感した眞下さんは、地元に戻る決意を固めたそう。「今後は産業と人と地域の好循環を作りたい。自分がプレイヤーになって頑張りたい想いもあるけど、次の世代にどうやって繋げていくかが課題なので、地域や産業が輝く好循環を生み出したいなと思います」と今後の展望を話してくれました。


生産者にスポットライトが当たる社会を目指すため起業を決意

早坂さんが東北で活動することになったのは結婚がきっかけでした。出張が多い仕事だったため結婚してしばらくは夫婦別々で暮らしていたものの、震災をきっかけに仕事に対して不安を感じ、起業に至った早坂さん。


早坂:震災後、プレイヤーではなくプラットフォームを作る人にスポットライトが当たる風潮があったと思います。生産者が1番輝く存在でないとローカルの小さな産業は続かないし衰退してしまう。一次産業の生産者や小さな商いをしている人と一緒に、商品を育てて販売する仕事をしようと思ったのが今の事業を始めたきっかけです。


創業当時は営業に行っても断られるケースが多かったものの、何もできないまま断られるなら必死に喰らい付こうと思い、デザイン料をお金ではない方法で還元できる仕組みを考えます。古米になってしまうお米をもらい、パッケージのデザインをしたお米を百貨店で売ることにしますが、販売時期が悪くなかなか買ってもらえなかったそう。それでも声を枯らしながらお米を売る姿勢が周りに認めてもらえるようになり、少しずつ信頼や評価に変わっていきます。

早坂:そういった過去の経験もあり、現在はデザイン料を農作物で納品してもらう取り組みを行っています。起業した当時は東北や一次産業のためにという想いが強く、それが自分を支えてくれるエネルギーや推進力になっていましたが、会社が黒字化した際にその想いだけではやっていけないと感じるようになりました。


会社が黒字化して大きくなると従業員や家族のことも考え始めた早坂さん。7年目の今は、自分のモチベーションを高く保つためにパフォーマンスを維持することが大切だと思うようになったそうです。「僕らの会社が必ず社会の役に立てている自信を持ててきたので、自分のモチベーションを高く保ち今の仕事を高いレベルで推進していければ、必ず社会は元気になると思っています。現状に満足せず自分がチャレンジャーであり続けるメンタルコントロールを大切にしたいですね」と話してくれました。


地域の価値あるものを映像で伝え、次のアクションにつなげる

大学から東北で過ごしている栗原さんの「東北と自分が重なった」きっかけは、大学卒業前にドキュメンタリー映画を制作した経験があったから。栗原さんは卒業前に秋田の思い出を残すため、映像を作ることを決めます。


栗原:秋田を出る前に今まで見てきたことや出会った人たちを記録として残すため、仲間と一緒に映像を作ろうと話していました。どんな映像を撮ろうか考えていたときに“沼山大根”と出会い、大根にまつわるドキュメンタリー映画『沼山からの贈りもの』を作ることにしたんです。


最初は自己満足で作り始めたドキュメンタリー映画だったものの、制作過程に関わる中で、農家さんの想いや東北が抱えている人口減少・高齢化問題などが見えてきたこともあり、1年をかけて映画を作り上げていきます。

栗原:秋田のいろんな地域に足を運ぶ中で愛着が湧いてきて、何かチャレンジしてみたい気持ちが強くなったんです。今まで秋田で、世間には注目されていないけれど素敵な人やモノにたくさん出会ってきました。継承者の人手不足で悩む地域では、このままだと価値あるモノや伝統が数十年後には消えてしまう現状を知って。映像という手段を使って、何かアクションを起こせるのではないかと思うようになっていきました。県外から来た自分たちだからこそ見える切り口や視点を最大限活用して、秋田のモノや場所を外に発信していくことを続けられたら価値提供ができるんじゃないかと。チャレンジするなら今だと自分を奮い立たせて起業を決意しました。


起業を決めたものの、周りから反対されることや周りの仲間たちと違う道を進むことに対してプレッシャーを感じていた栗原さん。映像業界の先輩に相談をした際も、「秋田に映像の仕事があるの?」と言われるたこともあったそう。ですが、「映像の市場がない秋田だからこそ市場を作っていける先駆者になれるし、自分たちの力量次第でフィールドを広げていけることにワクワクさを感じます。『就活の道を選ばずに秋田でチャレンジして良かった』とあの頃の自分に言いたいです」と語ってくれました。


リーダーではなく周りを支える存在がいてもいい


「自分と東北が重なったとき」をテーマに進めてきたパネルディスカッションも終盤へと差し掛かり、参加者からの質疑応答へと移っていきます。


「コロナ禍で大変だったこと、コロナ禍の東北だからこそ良かったことはありますか?」

「いま東京で事業をしています。東京と東北を繋ぐことで地元に貢献できればいいなと思っていますが、どんなことがあればいいと思いますか?」

など、参加者からの質問がチャット上で投げかけられます。ゲストの話を聞いた参加者の熱量も高まっていくのを感じられました。


「自分の強みや力をどのように発見されましたか?」と聞かれた栗原さんは、「小さな一歩を踏み出してみることで、映像で表現することが強みだと気付けるようになりました。自分が当初思い描いていた理想像と現実はかけ離れてしまっていますが、自分の趣味や好きなことが仕事になるかどうかは気にしなくてもいいと思います。少しでも興味のあることに対して小さなアクションを起こしてみることで、自分の強みや好きなことが見つかっていくのではないかと思います」と話してくれました。


最後に参加者へのメッセージを話してくれたゲストの言葉でパネルディスカッションを締めくくります。

早坂:今回のプログラムはリーダーシップ育成だと思いますが、必ずしも立場としてのリーダーになる必要はないと思っていて。コミュニティで自分がこの人についていきたい、この人を支えたいと思えるリーダーがいたら、支える選択肢もあるのではないかと思います。そういう出会いが生まれたら素敵ですよね。


眞下:何かにチャレンジするにあたって自分自身がやりたいことと、やらなければいけないことが繋がらない瞬間があると思います。ですが、アクションを続けていると仲間が増えると思うんですよね。その過程でリーダーシップが発揮できたり、自分の言葉や行動が結果に反映されたりすると思います。後で振り返ると楽しい思い出になるので、辛さも含めて楽しさを感じてもらえたらなと。一緒に東北を盛り上げていきましょう。


ゲストの話を真剣に聞く姿勢は画面越しからも伝わり、参加者の熱い想いが窺えました。地域のために何かできることはないかと考え、アクションを起こしてみようと自分を奮い立たせる時間になったのではないでしょうか。100名以上が参加し熱を帯びたイベントはDAY2へと移っていきます。


グループディスカッションで同年代との交流を深め、応援しあう東北を作る

初日の熱気冷めやらぬままスタートしたDAY2。両日参加する方も半数を超え、東北の未来を背負っていく次世代リーダーたちの姿が垣間見られました。DAY2は参加者が主体となって交流していく時間です。これからお互いに応援しあう関係性を創っていくことを目的としています。


今後のアクションコースに関わるメンターやコーディネーターの紹介も挟みながら、グループディスカッションへ。ブレイクアウトルームを使って1チーム4〜5人に分かれ、自分の活動や挑戦したいことを話した後は、テーマに沿って意見を重ねていきます。


ディスカッションテーマ:東北が応援しあう地域であるためには、どのようなコミュニティが必要か?またそのために何をすべきか?

地元を離れて県外で活動している人や生まれ育った地元で活動している人など、それぞれバックグラウンドは違えど、同じ想いを持って集まった方同士、波長が合うのかお互いの活動をすでに応援しあう関係性ができていることが話を聞く姿勢や態度から伝わってきます。


徐々に打ち解けていき、積極的にコミュニケーションを取っている様子や話に共感している姿が見受けられました。


ディスカッションでそれぞれのチームから上がってきた意見の一例


高齢者をひとりにしないコミュニティ。

パワーのある若者と高齢者を繋ぎ、どんな高齢者がいるのかをまず知ることで、見えない高齢者にアクセスでき、農業が盛んという東北の特色を生かすことができる。第二の故郷として魅力を伝えられると若者の移住にも発展しそう。


このコミュニティにいる方々が何をしていて、何に悩んでいるかをシェアしていきたい。

今回のつながりだけで終わらせず、実際のアクションも一緒にできるようなコミュニティであってほしい。自分一人だけではなく、地域全体や次の世代を考えている点が共通点だと感じた。


人を紹介してもらえるコミュニティ。

人と人が繋がるためのコワーキングスペースが必要になってくる。仕事をするためのコワーキングスペースではなく、おばあちゃんの家でお茶を飲みながら雑談する時間があれば気さくなコミュニケーションも取りやすくなる。

14チームに分かれて行ったグループディスカッションでは、この他にもたくさんの意見が飛び交い、メンター・コーディネーターも熱い想いをぶつけていきます。ゲストの話や参加者同士の声に耳を傾け、自分のアクションに繋げていこうとする前向きな姿勢や、同年代の活動に刺激をもらい感化された参加者も多くいたのではないでしょうか。


「共通のミッションを掲げて東北をより活性化する関係性は本当に素晴らしいと思いました」

「同年代かつ近くでこんなにもアクションしている若者がいる環境は他には無いと感じました」

「思っているだけではダメでアクションを起こす事が重要なのだと思った。なかなか理由をつけて一歩踏み出せない自分がいるが、小さなことでもいいから何かはじめてみようと思った」など、参加者からの想いが詰まった感想をいただき、幕を閉じたDAY2。


「応援しあう東北アカデミー」はこれにて終了となりますが、ゲストや参加者の話を真剣に聞く姿勢が見受けられ、イベント参加者の熱量を感じられた2日間となりました。


参加者自身がステップアップを目指すアクションコース

「応援しあう東北アカデミー」のネクストステップとして、8月31日からは約4ヶ月にわたるアクションコースが始まります。東北3県の地域課題解決に取り組み、アクションを起こしていく若者を対象とするリーダーシッププログラム。最後には「応援しあう東北スペシャルライブ」をクロージングイベントとして行い、今まで行ってきたことを発信する場も設けています。


アクションコースでは、全員が各自のアクションを開始・推進することを目指して、「応援しあうコミュニティ」「メンタリング」「知識・スキル」の3本柱でお互いの活動を応援しあっていきます。「学び・ふりかえり」と地域での「実践」を往復することを通して参加者自身がステップアップを目指しています。


プログラム終了後の目指す姿は、「応援しあう東北」のコミュニティを地域や世代を越えて形成できていること。お互いの活動を応援しあいながら未来の東北の次世代リーダーを創っていくコミュニティになることを目指していきます。


活動の様子は随時HPやSNSにて更新していきますので、ぜひチェックをよろしくお願いします。

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